ただの一撃でいつか自分の身体が死体になるという出来事の到来を誰よりも心得ているヤクザの群れには、ひとの顔貌や体幹に纏わる硬質な力学が飛び抜けて我々の目を引く。たとえ真っ正面から撃たれて血塗れになったとしても決して左にも右にも逃げない。海辺の廃家で途方に暮れつつも、クレーンに吊られている瀕死状態の金本とまるで同じ不自由さを持ったとしか言いようがない主人公たちの寝姿は、ひたすら落下する死の線からどうにも逃げられぬ窮途末路のしるしにすぎず、彼ら全員、悪戯心に満ちた砂辺の人工穴に落ちたがるかのように、様々な形での急死に運命付けられている。一度倒れたらわざわざ立ち上ってから銃を撃ち返す男の無頓着ぶり(そして再び、倒れる)を大いに笑う前に、我々の心を揺さぶるあの無機質で冷たい口調をちょっと思い出すがいい。
ヤクザをやめたくなったな、なんかもう疲れたよ、と。