1926年は前衛映画『狂った一頁』を製作。無声映画であるが説明の字幕も会話の字幕もなく、映像は過去と現在が交錯するし、現実と夢が交錯する。それに狂人の主観のイメージが加わり、生気と狂気の複合する混沌たる内面世界が純粋に映像のみで展開されるのである。
 1919年のドイツ映画『カリガリ博士』は狂人の内面世界を歪んだセットで視覚化して見せ、23年のフランス映画『鉄路の白薔薇』は人間の激情をフラッシュ・バックで謳いあげ、さらに25年のソビエト映画『戦艦ポチョムキン』はアトラクティヴな映像の一大シンフォニーのような映像世界を作り上げたが、そうした当時の世界の映画の前衛的な流れがここに結集したかのように、『狂った一頁』では、狂気の内面世界が見事なフラッシュ・バックによって映像のシンフォニーのように繰り広げられてゆくのである。
 1920年代は、世界的に、映画的表現の可能性の追求が急激に進んだ時期であり、それは一方では自然主義的なリアリズムの追求となったが、また一方では、飛躍した映像や意表を突く編集によって、どこまで人間の感覚を拡大してゆけるかということの探求になった。ドイツ表現派映画の光と影の異様なコントラストによる象徴的な効果、ソビエトのエイゼンシュテインのアトラクションのモンタージュ、やや遅れてフランス・アバンギャルド映画運動の詩的イマジネーションの強調によるストーリー否定。それらの要素はすべて、この『狂った一頁』のなかに躍動しているのである。

『日本映画史1』 佐藤忠男

疯狂的一页狂った一頁(1926)

又名:Kurutta Ippeji / A Page of Madness

上映日期:1926-09-24片长:59分钟

主演:井上正夫 / 中川芳江 / 飯島綾子 / 

导演:衣笠贞之助 / 编剧:川端康成 Yasunari Kawabata/衣笠贞之助 Teinosuke Kinugasa/犬塚稔 Minoru Inuzuka